医療費控除とセルフメディケーション税制は、名前や対象が似ているため、違いが分かりにくい制度です。
実際には、どちらも使えるわけではなく、同じ年分ではどちらか一方を選択する必要があります。
にもかかわらず、
「どこが違うのか」「何を基準に選べばいいのか」
が整理されないまま申告時期を迎えてしまう人も少なくありません。
この記事では、
- 医療費控除とセルフメディケーション税制の違い
- 両方使えるのかどうか
- 自分はどちらを選ぶべきか
を、制度の説明に偏らず、判断しやすさを重視して解説します。
結論|医療費控除とセルフメディケーション税制は併用できない
まず最初に結論です。
医療費控除とセルフメディケーション税制は、同じ年分で併用することはできません。
「医療費控除も使って、市販薬も控除できたらお得なのでは?」 と考えがちですが、実際にはどちらか一方を選択する必要があります。
そのため重要なのは、
自分の状況に合っているのは、どちらの制度か
を正しく見極めることです。
まず押さえる|2つの制度の基本的な違い
医療費控除とセルフメディケーション税制は、目的が少し異なります。
どちらも医療に関する支出が対象ですが、 「何を対象にしているか」が大きく違います。
比較表|医療費控除とセルフメディケーション税制の違い
違いを一目で確認できるよう、表にまとめます。
| 比較項目 | 医療費控除 | セルフメディケーション税制 |
|---|---|---|
| 対象費用 | 医療費全般 | OTC医薬品のみ |
| 適用条件 | 10万円超 | 1.2万円超 |
| 病院への通院 | 多い人向け | 少ない人向け |
| 健康診断等 | 不要 | 要件あり |
| 家族分の合算 | 可能 | 不可 |
| 確定申告の要否 | 必要 | 必要 |
| 適用上限 | 200万円 | 8.8万円 |
この表を見ると分かるとおり、 単純に「どちらがお得か」ではなく、支出の中身と金額の基準が判断ポイントになります。
控除額はどう計算する?|計算式と簡単な計算例
ここまでで「どちらを選ぶか」の方向性は見えてきますが、 実際には 控除額がどれくらいになるのか を知っておくことも重要です。
医療費控除の計算式
医療費控除の控除額は、次の計算式で求めます。
医療費控除額 = 実際に支払った医療費 - 保険金等で補填される金額 - 10万円 (※総所得金額等が200万円未満の場合は「10万円」の代わりに「総所得金額等の5%」)
計算例(医療費控除)
- 1年間に支払った医療費:15万円
- 保険金などの補填:なし
15万円 - 10万円 = 5万円(医療費控除額)
この 5万円 が、所得から差し引かれる金額になります。
※年収400万円(所得税+住民税=20%とした場合)、 5万円 × 20%=約1万円が、税金の軽減額の目安になります。
セルフメディケーション税制の計算式
セルフメディケーション税制の控除額は、次のとおりです。
セルフメディケーション税制の控除額 = 対象医薬品の購入額 - 1万2,000円
計算例(セルフメディケーション税制)
- 対象となる市販薬の購入額:3万円
3万円 - 1万2,000円 = 1万8,000円(控除額)
この 1万8,000円 が、所得から差し引かれます。
※年収400万円(所得税+住民税=20%とした場合)、 1万8,000円 × 20%=約3,600円が、税金の軽減額の目安になります。
※どちらの制度も「控除額」そのものが戻ってくるわけではなく、 控除額 × 所得税率・住民税率に応じて税金が軽減される点に注意が必要です。
あなたはどっちを選ぶべき?
医療費控除を選ぶべき人
次のようなケースでは、医療費控除が向いています。
- 通院や入院が多かった
- 家族分の医療費を合算できる(生計を一にする配偶者・子・親などの親族。同居・別居は問わない)
- 医療費が10万円を超えている
医療費控除は対象範囲が広いため、 病院にかかる機会が多い年ほど有利になりやすい制度です。
セルフメディケーション税制を選ぶべき人
一方で、次のような人はセルフメディケーション税制が向いています。
- 健康診断等の一定の取り組みを行っている。
- 対象となる市販薬の購入額が1万2,000円を超えている
- 病院にはあまり行っておらず、医療費が10万円に届いていない
※ そのその年に健康診断等の健康の保持増進及び疾病の予防への取り組みを行っていることが前提
※ 厚生労働省が指定した一般用医薬品(OTC医薬品)が対象になる
例)ロキソニンS、アレグラFX、ガスター10など
No.1129 特定一般用医薬品等購入費を支払ったとき(医療費控除の特例)【セルフメディケーション税制】
セルフメディケーション税制(特定の医薬品購入額の所得控除制度)について
「医療費控除は使えないけれど、市販薬の出費が多かった」 という場合の選択肢になる制度です。
セルフメディケーション税制を選択する場合の留意点
- レシートの品名行に「控除対象」などの表示があるか →国税庁も、対象医薬品は領収書(レシート)に控除対象であることが記載されると案内しています。
- パッケージの識別マークの確認 →一部の対象医薬品は、パッケージに「セルフメディケーション税制」の対象である旨の識別マークが掲載されています(ただし、マークがなくても対象の薬もあります)。
- 迷ったら、店頭で薬剤師・登録販売者に「セルフメディケーション税制の対象か」を確認する
- レシートや箱(レシートに記載がない場合)を保管 →確定申告書への添付は不要だが、申告内容を説明できる資料として保存が必要
- 健康診断などの要件を満たしていない
- 医療費控除の方が結果的に有利になることがある
具体例|家族分を合算すると医療費控除が有利になるケース
- 本人の支出:医療費3万円+OTC医薬品購入費2万円
- 配偶者・子の支出:医療費8万円+通院交通費1万円+OTC医薬品購入費2万円
※ OTC医薬品購入費は医療費に該当しないもの(医師の診断に基づかないもの)とします。
この場合、 医療費控除となるのは、 本人の医療費3万円+配偶者・子の医療費8万円+通院交通費1万円 の合計 12万円 から10万円を差し引いた2万円 となります。
一方、セルフメディケーション税制の対象となるのは、本人のOTC医薬品購入費2万円−1万2,000円=8,000円 にとどまります。
「使えると思っていたのに使えなかった」 という事態を避けるためにも、事前の確認が重要です。
よくある誤解
- 医療費控除とセルフメディケーション税制は両方使える →同じ年分ではどちらか一方しか選べない
- 医療費が少ないと医療費控除は一切使えない →家族分を合算すると10万円を超えるケースがある →総所得金額等が200万円未満の場合、総所得金額5%を超える部分が対象になる
- 市販薬ならすべて控除対象になる →厚生労働省が指定した一般用医薬品(OTC医薬品)が対象になる →「市販薬を買っただけ」では使えない(健康診断受診などの一定の取り組みを行っていることが前提)
これらはいずれも誤解です。 制度の前提を正しく理解することが、失敗しない申告につながります。
申告前に確認しておきたいポイント
確定申告の前には、次の点を確認しておきましょう。
- どちらの制度が有利かを試算しているか
- レシートや明細が整理できているか
- 一度選ぶと後から変更できないことを理解しているか
「とりあえず申告する」のではなく、 納得したうえで選択することが大切です。
まとめ|迷ったら「支出の中身」で判断する
医療費控除とセルフメディケーション税制は、 どちらが正解という制度ではありません。
- 医療費が多い年は医療費控除
- 市販薬の出費が多い年はセルフメディケーション税制
このように、支出の内容と金額の基準に合わせて選ぶことが重要です。
制度の違いを理解したうえで、 自分に合った方法を選択できれば、確定申告への不安も大きく減らせるはずです。
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