会社員の医療費控除|確定申告は必要?家族分は?迷いやすいポイントを整理

会社員の場合、年末調整があるため、 「税金のことは会社がやってくれるでしょ?」 と考える方も少なくありません。

医療費控除は名前はよく聞くものの、 自分が対象かどうか、手続として何が必要なのかが分かりにくい制度です。

この記事では、制度の説明に偏りすぎず、

  • どのような費用が対象となるのか
  • どんな点で迷いやすいのか
  • 医療費控除を受けるために何が必要なのか

を整理し、 「自分はどう行動すべきかどうか」が判断できるように解説します。


目次

結論|会社員でも医療費控除を使うなら確定申告が必要

まず結論です。

会社員であっても、医療費控除を使う場合は確定申告が必要です。

年末調整では、医療費控除は反映されません。 そのため、医療費控除を受けたい場合は、 自分で確定申告を行う必要があります。

ただし、

  • そもそも医療費控除の対象になるのか
  • 家族分や交通費も含めることができるのか
  • 申告の手間に対して控除が見合ってないのではないか

といった点で迷い、 「申告した方がいいのか分からない」 という人が多いのが実情です。


医療費控除が可能かどうかの判断ポイント

医療費控除を使うかどうかは、 次のポイントを順に確認すると判断しやすくなります。

医療費はいくらかかったか

まず、1年間に支払った医療費の合計を確認します。

  • 自分自身の医療費
  • 家族分として合算できる医療費

をすべて合計し、 原則10万円を超えているかが目安になります。

※ 総所得金額等が200万円未満の場合は、 「10万円」ではなく「総所得金額等の5%」が基準です。


家族分はどこまで合算できる?

医療費控除では、 生計を一にする親族の医療費を合算できます。

  • 配偶者
  • 子ども

などが対象で、 同居・別居は問いません。

「扶養に入れていないからダメ」というわけではなく、 生活費を負担している関係であれば合算できるケースがあります。


他の制度と併用していないか

医療費控除と、 セルフメディケーション税制は、 同じ年分で併用することはできません。

どちらか一方を選ぶ必要があるため、 医療費全体の金額や内容を見て判断する必要があります。


医療費になる?ならない?よくある具体例で確認

イメージしやすい代表的なケースを整理します。

まずは、分類・支出の内容をみて該当するものがあれば、詳細を確認してみてください。

分類支出の内容医療費控除の対象補足ポイント
歯科虫歯・歯周病の治療治療目的であれば対象
かみ合わせ改善のための歯科矯正医療目的であれば対象
ホワイトニング×審美目的は対象外
インプラント治療治療目的であれば対象
眼科眼科での診察・治療検査・治療は対象
レーシック手術視力回復を目的とした医療行為
オルソケラトロジー治療医師の管理下で行われる治療
メガネ・コンタクト購入治療に直接必要な場合のみ対象
妊娠・出産妊婦健診原則として対象
出産費用出産育児一時金を差し引いた額
不妊治療医師の指示に基づくものは対象
入院・手術病気やけがによる入院費治療目的であれば対象
手術費用(保険診療・自由診療)医療行為として行われるもの
差額ベッド代治療上やむを得ない場合のみ対象
入院中の食事代標準負担額は対象
健康管理健康診断(異常なし)×予防目的は対象外
健康診断後の精密検査治療につながる場合は対象
マッサージ等国家資格者による治療目的のマッサージあん摩マッサージ指圧師など
鍼灸・整骨院での治療医師の同意・治療目的が前提
リラクゼーションマッサージ×疲労回復・癒し目的は対象外
整体・カイロプラクティック×民間資格のみは対象外
交通費電車・バスでの通院費公共交通機関のみ対象
タクシー代緊急時など合理的理由が必要
自家用車のガソリン代×原則対象外

「治療が目的かどうか」が、医療費控除の判断ポイントになります。

保険金や給付金で補填される金額がある場合は注意が必要です。 出産育児一時金のほか、医療保険から支払われる入院給付金・手術給付金など、 医療費の支払いを補填する目的の給付金がある場合は、その金額を差し引いた後の自己負担額を医療費として計算します。

「実際に自分が負担した金額」が、医療費控除の対象になる点は押さえておきましょう。


これも対象?これは対象外?意外と見落としがちなQ&A事例

「これは医療費になると思っていなかった」「逆に、これは対象外なの?」と感じやすいケースを、Q&A形式で整理します。

Q1. 通院のための交通費は医療費控除の対象になる?

A. 電車・バスなどの公共交通機関は対象になります。

通院のために利用した電車・バスの交通費は医療費控除の対象です。領収書がなくても、日付・区間・金額をメモしておけば問題ありません。

一方、自家用車のガソリン代や駐車場代は原則として対象外です。タクシー代も原則対象外ですが、深夜・緊急時など公共交通機関を利用できない合理的な理由がある場合は対象になることがあります。

Q2. 市販薬の購入費用は医療費控除できる?

A. 治療目的であれば対象になります。

ドラッグストアで購入した風邪薬や鎮痛剤などでも、病気やけがの治療を目的として購入したものであれば医療費控除の対象です。

一方、ビタミン剤や栄養ドリンクなど、健康維持・予防を目的としたものは対象外です。

また、市販薬であっても次のようなものは、原則として医療費控除の対象になりません。

  • 予防や体調管理を目的とした医薬品
  • 栄養補助を目的とした医薬品・指定医薬部外品
  • 症状がなく「念のため」「常備用」として購入した薬

判断のポイントは、購入時点で治療が必要な症状があったかどうかです。

Q3. 自由診療はすべて医療費控除の対象外?

A. 治療目的であれば、自由診療でも対象になります。

保険が使えない自由診療であっても、病気やけがの治療を目的とした医療行為であれば医療費控除の対象です。

レーシックやオルソケラトロジー、不妊治療、先進医療などは、「自由診療=対象外」と誤解されやすい代表例ですが、治療目的であれば対象になります。

一方、美容整形やホワイトニングなど、見た目の改善を目的とした施術は対象外です。

Q4. 整体・カイロプラクティック・マッサージは対象になる?

A. 国家資格者による治療目的の施術のみ対象です。

あん摩マッサージ指圧師、はり師・きゅう師、柔道整復師など、国家資格を持つ施術者による治療目的の施術は医療費控除の対象です。

一方、整体院やカイロプラクティックなど民間資格のみの施術は対象外となります。リラクゼーション目的のマッサージも対象になりません。

Q5. メガネ・コンタクトレンズの購入費用は医療費控除になる?

A. 原則として対象外ですが、例外があります。

日常的な視力矯正を目的としたメガネやコンタクトレンズの購入費用は、原則として医療費控除の対象になりません。

ただし、白内障などの治療後に医師の指示で必要となったメガネなど、治療に直接必要と認められる場合は対象になることがあります。

Q6. 健康診断や人間ドックは医療費控除できる?

A. 原則対象外ですが、例外があります。

健康診断や人間ドックのみの場合は対象外です。

ただし、健診で病気が見つかり、その後治療につながった場合は、健診費用も対象になることがあります。

Q7. 妊娠・出産にかかる費用は医療費控除の対象?

A. 原則として対象になります。

妊婦健診、検査費用、分娩費用、入院費用など、妊娠・出産に直接関連する医療行為の費用は医療費控除の対象です。

出産育児一時金や保険金など、補填される金額がある場合は、その分を差し引いた自己負担額を医療費として計算します。

なお、妊娠判定薬やマタニティ教室、里帰り出産のための交通費などは対象外となります。

Q8. 介護サービスや施設費用は医療費控除の対象?

A. 介護保険サービスの自己負担分は対象になるケースが多いです。

訪問介護やデイサービス、介護施設の利用料については、領収書に記載された医療費控除対象額を合算できます。

Q9. 家族の医療費も合算できる?

A. 生計を一にする家族であれば合算できます。

配偶者や子ども、親など、生活費を負担している関係にある親族の医療費は合算して申告できます。

同居・別居や扶養の有無は問いませんが、実際に支払った人が申告する点には注意が必要です。

また、所得の高い方がまとめて申告したほうが、控除の恩恵を受けやすいケースが多い点も押さえておきましょう。


家族分を合算すると対象になるケース

一見すると医療費が少なくても、 家族分を合算すると医療費控除の対象になるケースがあります。

計算式|医療費控除額の考え方

医療費控除額は、次の計算式で求めます。

(1年間に支払った医療費の合計額 − 補填される金額) − 10万円 = 医療費控除額

※ 総所得金額等が200万円未満の場合は、10万円ではなく「総所得金額等の5%」を差し引きます。

具体例

  • 本人の医療費:3万円
  • 配偶者・子の医療費:8万円
  • 通院のための交通費:1万円

この場合、合計は12万円となり、 10万円を超えるため医療費控除の対象になります。

医療費控除額は、 12万円 − 10万円 = 2万円 です。

節税額の目安|年収400万円の場合

仮に日本の平均的な年収である年収400万円(所得税・住民税あわせて税率20%)とすると、 2万円 × 20%=約4,000円が、税金の軽減額の目安になります。

金額だけ見ると小さく感じるかもしれませんが、4,000円という金額も、このご時世では決して無視できるものではありません。

物価や税負担がじわじわ上がる中で、「払わなくてよい税金をきちんと減らす」という意識を持つこと自体に意味があります。

また、医療費控除は、その年に申告しなかった場合でも、後から申告することができます。

確定申告の期限を過ぎていても、 原則として過去5年分までさかのぼって還付申告が可能です。

「当時は金額が少ないと思っていた」「家族分を合算できると知らなかった」 といった場合でも、 あとから計算し直して申告できる余地がある点は知っておきたいポイントです。


申告前に確認しておきたいポイント

確定申告をする前に、次の点を確認しておくと安心です。

  • 医療費の合計額が10万円を超えているか
  • 交通費や家族分を含めているか
  • レシートや明細を保存しているか

確定申告の際に明細等の添付は不要ですが、 申告内容を説明できる資料として保存が必要です。

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